ひとりごと
〜2003.April〜

だから私は食事に呼ばれるのは嫌なんだ!
人を呼んでおいて、こんなものを喰わせるとは!!

雁屋哲 花咲アキラ「美味しんぼ」より




4.28 mon.

福岡−東京を巻き込んだ、とんこつラーメン戦線に異状あり。






事の発端は、今から2年前。
東京・中目黒にある九州の郷土料理店「暖暮」が、
一軒のラーメン専門店をオープンさせたことから始まりました。
その名を、「康竜」といいます。



康竜のスタイルは、当時まだ東京未進出だった、 博多のNo.1ラーメン店
「一蘭」を完全に真似たものでした。


しかしながら、スープや麺はなかなか頑張ってはいたのですが、
如何せん一蘭が一蘭たる所以でもある「秘伝のたれ」が、
本家とは似ても似つかぬ代物。



私も「一蘭の支店か?」と思って行ってみたのですが、その味は
とても九州の人間を満足させられるものではありませんでした。
(当時の評価についてはRamen Wonderland「(東京:中目黒)康竜」参照)






ところが、康竜はその後「博多の大人気店の姉妹店」として大ブレイク。
いつの間にか、都内に数店舗を構える行列店となってしまったのです。



東京進出を果たした一蘭も黙ってはいません。店内掲示などで
康竜の極悪非道っぷりをこれでもかと訴えた後、ついに裁判所にまで
訴え出てしまいます。



但し、康竜は、その奇抜なアイディアは上手いとしても、
肝心のラーメンそのものについては明らかに実力が伴っておらず、
私はこの二者の争いをかなり冷ややかに見守っておりました。
ブームが去れば、本当に旨いラーメン店だけが生き残るのだから、と。






ところが、この話には伏線がありました。
実は「康竜」オープンの一年前、郷土料理店「暖暮」は
福岡に同名のラーメン店をオープンさせていたのです。



そして、地元の人を中心にコアな人気を博していた福岡・暖暮ですが、
昨年の11月に福岡地区で放送されたラーメン番組(ゴールデンタイム特番!)で、
一蘭や一風堂といった老舗を押さえて優勝してしまいます。
暖暮は、今や福岡でも有数の行列店になってしまったのでした。



話を聞いて、私も食べに行ってみました。
良くも悪くも一蘭の特徴であった化学調味料のケミカルな旨みが抑えられ、
代わりにほんのりと魚介系の味わいが漂っています。
極細ストレート麺に多少難はあるものの、課題であったたれも
コショウの効いた独自のものを確立(但しかなり辛い)。



好みは分かれるところですが、最近味も量も落ち気味な
一蘭に較べると、正直、軍配は「暖暮」へ上げざるを得ません。





今年三月、「暖暮」名義のラーメン店が、いよいよ東京・神田に 進出しました。
さっそく行ってみましたが、福岡本店と変わらぬハイレベルなラーメンです。
(但し、やっぱり辛味ダレは辛すぎ。せっかくの繊細な味が壊されてしまい
もったいない。「少なめ」もしくは「タレ無し」のオーダーがオススメ。)



それに対し一蘭は、東京ドームシティや渋谷へも新規出店するなど
多店舗攻勢をかけていますが、さて、いかがなものか。






何はともあれ、おいしいラーメン店が増えるのは、ファンにとっては
願ってもないこと。どんどん競争してほしいと思います。
裁判なんてみみっちいことに金かける余裕があるなら、ね。






ちなみに先日、最近のお気に入りラーメン店、大久保「もちもちの木」が、
東京1週間にスッパ抜かれてしまいました。
せっかく行列の少ないよい店だったのに…。講談社○ってヨシ!











4.17 thu.

院試に向けて勉強しなきゃ・・・と思いつつ、未だ引っ越し後の
部屋の整理すらできていない状態。
何故なのでしょうか。バイトもまだ始めてないのに。時間はあるはずなのに。
その日その日単位で雑事に追われる毎日。






それでも、ちょこちょこと勉強していて思うこと。



「自分、ホント大学時代勉強してなかったんだな・・・」



いや自分では、人並みを5としたら、5.35くらいは勉強してたつもりですよ。
でも、そのおよそ5の勉強がある一定の分野に偏りすぎていて、
基本中の基本のはずの論文を実は読んでなかったりとか、
読んでても忘れてたりとかで。いや、お恥ずかしい限り。



・・・つか、こんなんで大丈夫なのか?試験は。






社会学といえば、先日ある友人と話していたときに、当サイトの名前を
「セイ・ハロー・トゥ・マックス・ウィーバー」と読まれてしまいました。



そういえば、もう2年半もやっていながら、このサイトの名前について
お話ししたことってなかったんですね。失礼いたしました。



Max Weberの読み方、正しくは「マックス・ウェーバー」です。
ドイツ語読みで「ヴェーバー」と読む人もいます。
現在の社会学の基礎を築いた、偉大なる(?)研究者の一人です。






ウェーバーの論文で特に有名なのが、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」。
社会学の世界では「プロ倫」という略称が一般化しているほどの、古典中の古典です。



「プロ倫」の内容を簡単に一言で言うと・・・



『利益を追求する資本主義の精神は、実は禁欲を美徳とする
キリスト教徒(プロテスタント)の倫理の中から生まれてきたものである』



・・・こんな簡単でホントにいいのか?というツッコミはさておき、
普通に考えると、言ってることが支離滅裂なので、これも簡単にご説明します。






プロテスタントの考え方では、人は大きく分けて二つに分かれます。
「神から選ばれた人間」と「そうでない人間」です。
選ばれた人間には、永遠の命が約束されます。
もちろん、16世紀生まれで今も生きている人間は中野区内には
いないようなので、「生まれ変わる」という意味でしょう。おそらく。




これは初めから神様が決めていることなので、人間がどれだけ頑張っても、
その運命を覆すことはできません。
ホントやりたい放題の神様ですが、敬虔なるプロテスタントの人々は不安でたまりません。
何せ、選ばれなかった人間には「永遠の死滅」が待っているのだそうですから。




さて、もうこうなると、一般ピープルにできることは一つしかありません。
根拠がなくても、とりあえず自分は「選ばれた人間である」と信じることです。
そりゃそうです。だって自分の力ではどうしようもないのですから、
そうでも思い込まなきゃ人生やってられません。




自分が「神に選ばれている」と思い込んだ人間は、どういう行動をとるでしょうか。
21世紀であれば、ビルに民間旅客機突入させたりしますが、当時はパンナムもない時代です。
そもそも、元大統領のS.Fさんとは違い、パンピーにそんな大胆な行動が取れる訳がありません。
ただひたすら神の教えを忠実に守って生きるくらいで精一杯です。



プロテスタントの人々にとっては、働くこととは神に仕えるのと同じことでした。
働くことは、神が人々に与えた使命であると考えられていたためです。
選ばれた(と思い込みたい)人々は、働くことでただただ神の意志に従おうとします。
つまり、彼らはお金のためではなく、あくまで神の意志で働いている(と思い込んでいた)のです。




彼らにとっては、給料日出たらとりあえず歌舞伎町へ・・・なんてトンデモない話。
お金とは、神の意思に従って働いた結果得られるもの。
お金を持っていればいるほど、それは神の使命に従順だったという証拠物になるのです。
こうしていつの間にか、禁欲し、お金をたくさん貯めているということが、
「自分は選ばれている」という確信を得るための一つの指標となっていったのでした。



長い時間をかけて宗教色が薄れていくと、今度はお金を貯めることが自己目的化していきます。
こうして、現在の資本主義を支える「お金を持つのはいいことだ」という精神は
成立したのでしたとさ。








ちなみに、日本にも似たような説を唱えた人物がいます。
著者名は不詳ですが、「風が吹けば桶屋が儲かる」略して「風桶」といいます。
これはみんな知ってるでしょうから、ごくごく簡単に説明すると、



「風→砂→失明増→琵琶法師増→三味線増→ネコ少→ネズミ増→桶少」です。



私にはどちらの理論も、そのメチャクチャ度は大差ないように思えて仕方がない。マジで(笑)。






って、社会学研究者志望の人間が果たしてこんなことでいいのか。
これって、日本文学の学者になりたい人が、源氏物語について



「ロリコンでマザコンの男がやりたい放題やる物語」

   ↓

「あれ、盆に台場でいっぱい売ってる物語と変わんねーじゃん」



と説明してるのと同じレベルですな。
いや、明らかによくないと思う。これは(笑)










4.8 tue.


ようやく引越しが完了いたしました。
今度の新住居は中野です。
全人口の9割5分が専業農家というわが故郷(ウソ)を出て苦節ウン年。
ついに私も23区民の仲間入りでございます。






さて、突然ですが、ここで面白いデータを一つ紹介しましょう。
非関東在住者には何が面白いのか分からないと思いますが、
そこは一つご容赦を。



東京住みたい沿線ベスト5
1位:東急東横線
2位:小田急線
3位:東急田園都市線
4位:中央線
5位:京王線



東京住みたくない沿線ベスト5
1位:常磐線
2位:京成線
3位:東武伊勢崎線
4位:総武線
5位:宇都宮線(東北線)



この天気図、完全に西高東低、冬型の気圧配置です。
ところが、よく考えてみましょう。
基本的に東京の鉄道は、西と東を地下鉄でつなげる、という
スタイルが一般的ですよね。分かりやすく図示すると…



日吉−(東急東横線)−中目黒−(営団地下鉄日比谷線)−北千住−(東武伊勢崎線)−東武動物公園

本厚木−(小田急線)−代々木上原−(営団地下鉄千代田線)−北千住−(常磐線)−取手



つまり、「人気の沿線」も「不人気の沿線」も、結局線路は一本で
繋がっている訳です。
これが地下鉄直通運転という独特のシステムを持つ日本の交通網の恐ろしさ。






さて、ではなぜこのような人気の差が出てきてしまっているのでしょうか。
それは何よりも「沿線イメージ」に由来しているものと考えられます。
もっとズバリ言ってしまえば、東京における東西の所得格差。



ま、それぞれの地域にどのようなイメージを持つかは人の勝手です。
人もうらやむ東急線のホームで駅員が刺されたり、小田急の利用客満足度が
全鉄道会社中最低だったり(ちなみに宇都宮線は意外に高得点)、
私に言わせればどっちもどっち。






ただ、この不毛な争いをさらに激化させているのが、鉄道会社間にある
奇妙なライバル意識(と思われる感覚)です。
もちろん、鉄道会社が本当にそんな意識を持っているのかは、想像するしかありません。
しかし、上に挙げた路線は、いずれも直通運転を行っていないのです。



東急東横線:北千住まで日比谷線を直通運転

東武伊勢崎線:中目黒まで日比谷線を直通運転



小田急線:北千住まで千代田線を直通運転

常磐線:代々木上原まで千代田線を直通運転



小田急線は、最近のダイヤ改正で常磐線からの直通を多少受け入れるようになりました。
あまりの利用客満足度の低さにさすがに危機感を覚えたのか、
小田急は最近サービス向上に必死です。
それはそれでいいとして、ひどいのは東急−東武間の争い。



東急線沿線住民から見ると、東武線は素朴さ(ドロ臭さ)の象徴であり、
東武線住民にとって東急線はおしゃれ(スカした連中)の代名詞。
東急としては沿線イメージを損ないかねない東武のボロ列車を線内に入れることはできず、
東武は東武で「お高くとまった野郎」と鼻息を荒くしている訳でしょう…たぶん。






さて、傍から見ている分には滑稽で笑える両社および沿線住民の対立。
しかし、最近、この争いに和解の光明がさしてくる出来事が起こりました。
それは、営団地下鉄半蔵門線の全線開業。
この地下鉄半蔵門線、何と下図のように東西をつなげてしまったのです。



中央林間−(東急田園都市線)−渋谷−(営団地下鉄半蔵門線)−押上−(東武伊勢崎線)−南栗橋



日比谷線問題で戦争真っ最中の東急線・東武線が、今度は半蔵門線という
新たな地下鉄路線によって、再び一本につなげられてしまったのでした。



そして驚くべきことに、今回はこのつながった一本の線路を
全線直通運転する列車まで誕生してしまったのです。
結果、東急線の線路上を東武の素朴な(田舎っぽい)列車が走り、
東武線上を東急の都会的な(イヤミな)列車が走るという
前代未聞の状況が生まれたのでした。






鉄道関係に少しでも興味を持っている人であれば、この両社の和解(?)は
歴史的な出来事でした。ところが。
時代も変わったもんだ…と、何だかよく分からん感慨に浸っていたのもつかの間、
先日、地下鉄押上駅の電光掲示板で、私は恐るべき表示を発見してしまったのです。



「先発:中央林間行―――東急の車両が来ます」



そう。行先を知らせる表示板には、ご丁寧に、次の列車が
「どこの会社の車両なのか」激しく点滅しながら案内されていたのでした。






…こうして、東西鉄道会社の果てしなき闘いは、まだまだ続いていくのでしたとさ。おしまい。











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